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タスク

  • 震災時における構造物の応答のモデル化・予測

既存手法

  • センシングデータを用いて構造物の応答を予測する手法として, 識別ベースのアプローチや解析的なアプローチが用いられてきた
  • 識別ベースのアプローチでは, ブラックボックスモデルや状態空間モデルを使用
    • 与えられた加振を対応する応答にマッピングすることでシステムの動的応答をシミュレーション・予測
    • 計算コストと精度のトレードオフ
  • 解析的なアプローチとしては, ARIMA等の時系列モデルが用いられている
    • 定常性と線形性という強い仮定に基づいており, 精度が出にくい
  • 最近はSVNやニューラルネット等の機械学習モデルの適用も進んでいる
  • しかし, RNNやCNN等より高度な深層学習モデルを用いた構造応答モデリング・予測に関する文献は非常に限られている

提案手法

  • データ駆動型の構造応答モデリングの限界を解決するために, 物理法則に基づく新しいCNN (PhyCNN)を提案
  • (i) 既知の物理学の知識を深層学習モデルに組み込み, (ii) 利用可能な地震のデータに基づいてPhyCNNを学習 する
    • 提案手法は脆弱性解析にも利用できる
    • ニューラルネットの出力に物理法則による制約を与えることで少数データでも頑健な予測ができる
  • 運動方程式 \(\ddot{\bf x}(t) + {\bf g}(t) = - \Gamma\ddot{\bf x}_g(t)\)に従う系を考える
    • ここで \({\bf g}(t)\)は復元力, \({\bf x}\)は変位, \(\ddot{\bf x}\)は加速度, \(\ddot{\bf x}_g(t)\)は表面加速度
  • 提案手法 PhyCNNは1次元CNNとグラフベースのテンソル微分器から構成され, 時刻 \(t_1\)から \(t_n\)までのサンプル時刻における加速度 \(\{\ddot{x}_g(t_1),...,\ddot{x}_g(t_n)\}\)が入力として与えられた下で構造物の応答を予測する
  • 1次元CNNの出力は変位 \({\bf x}(t)\), 速度 \(\dot{\bf x}(t)\), 復元力 \({\bf g}(t)\)からなる潜在ベクトル \({\bf z}(t) = \{ {\bf x}(t),\dot{\bf x}(t),{\bf g}(t) \}\)
  • テンソル微分器では1次元CNNの出力 \({\bf z}\)の微分 \(\dot{\bf z} = \{ {\bf x}_t(t),\dot{\bf x}_t(t),{\bf g}_t(t) \}\)を有限差分法を用いて計算する
    • ここで添字 \(t\)は各状態の時刻についての微分を表す
  • 損失関数 \(J\)はデータへの当てはまりの良さを表す \(J_D\)とどの程度物理法則に従っているかを表す \(J_P\)の和で定義される
    • \(J_D\)は変位 \({\bf x}(t)\), 速度 \(\dot{\bf x}(t)\), 復元力 \({\bf g}_t(t)\)各々の予測値と観測値の二乗誤差
    • \(J_P\)は物理法則に基づく制約 \(\vert\vert\dot{\bf x}_t+{\bf g}+\Gamma\ddot{\bf x}_g\vert\vert^2\)を含む

実験

  • 2つの例を通して構造物の変位を予測タスクにおけるPhyCNNの性能を示す
    • 1つ目は\({\bf x}\), \({\bf g}\)を含む全ての測定値が学習に利用可能なケース
      • なお \(g\)は \(\ddot{\bf x}\)の測定値から推論できる
    • 2つ目は \(\ddot{\bf x}\)の測定値のみが学習に使えるケース
  • PEER地震データベースから地震記録によって励起された非線形システムの数値シミュレーションデータを取得
  • 図4でPhyCNNとCNNの予測性能を比較
    • 図4(a)はPhyCNN (左上)とCNN (左下)の両方について90の予測データセットすべてを対象とした回帰分析結果を示している
    • 予測精度が大幅に向上していることがわかる
    • 図4(b)では時系列の予測値と観測値をプロット
    • PhyCNNの予測値は大きさ, 位相ともに観測値とよく一致している
  • またPhyCNNは図5に示されるように速度 \(\dot{\bf x}\)を精度良く予測することができる